ソフト・ロボティクス入門1:やわらかいロボットを目指して

気まぐれに連載、ソフト・ロボティクス入門である。

「ロボティクス」はロボットに関するさまざまな技術や学問をまとめて呼ぶ言葉だ。最近は、工学だけにとどまらない学際的な分野になったので、「ロボット工学」よりも「ロボット学」と言った方が合っている。

「ソフト・ロボティクス(Soft Robotics)」はロボティクスの中でもまだ研究途上の、若い分野だ。なにができるかわからないけれども、これがロボティクスの未来だと信じる少数の研究者が、いろいろなことを試している。黎明期ならではの活気と多様性が、この分野にはある。

ここで使っている「ソフト」というのは、文字通り「やわらかい」という意味で、「コンピュータ・ソフトウェア」のことではない。注意。

やわらかさという観点でロボットのハードウェアを根本的に変えたとき、ロボットの作り方も、使い方も、大きく変わるだろう。ロボットが非常に安く作れるようになるかもしれないし、ロボットがロボットを生むようになるかもしれない。やわらかさは、人間と触れ合う人工物には必ず必要な特長だろう。

ソフトなロボットとわざわざ言っているのは、これまでのロボットが、他の工業製品と同じで硬質な手触りの金属的なものだったからだ。もしもソフト・ロボティクスが十分発展したら、ロボットがやわらかいことは当たり前になって、その時はソフト・ロボティクスという言葉は消えるだろう。

ソフト・ロボティクスの現状をたくさん紹介していきたいと思うが、今回は2つの研究を挙げるだけにする。

体がやわらかいといえば、海洋に住む軟体動物が思い浮かぶ。ソフト・ロボットには、水生動物を模倣したものが多い。タコ、魚、クラゲなどだ。イタリア・聖アンナ大学院大学(Scuola Superiore Sant’Anna)のCecilia Laschi博士が率いるOCTOPUSプロジェクトは、名前通りタコに学んだ巧みでやわらかいロボットを作る研究プロジェクトだ。プロジェクトの目指す人工タコのイラストと、開発されたタコ・ロボットの足のビデオがこちら。

OCTOPUS project
Concept illustration of the OCTOPUS project (from OCTOPUS project gallery)

新しい素材の開発も、ソフト・ロボティクスの重要なテーマだ。コーネル大学(Cornell University)のCornell Creative Machines Labで開発されたのは「ジャミング(jamming)」という原理を使ったロボット・ハンドだ。持つ物に押し付けて変形させた後、硬くすることで、いろいろなものをつかむことができる。このグリッパーは、開発者たちが創業したEmpire Roboticsというスタートアップで、Versaballという名前で製品化された。

Universal jamming gripper
Universal jamming gripper (from Empire Robotics Press Kit)

以上はソフト・ロボティクスの入り口。いろいろな切り口で、この新しい分野を見渡していきたい。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中