ソフト・ロボティクス入門6:膨らむロボット

やわらかいものといえば、輪ゴムやクッションを思い浮かべるけれど、
実は、形のない空気もやわらかいものの一種だ。

注射器に閉じ込めた空気を押してみた経験はあるだろうか?
空気はピストンを押し返すので、バネのような感触がする。気体は、圧縮すると圧力が上がる性質をもっているので、バネになる。空気のバネ特性を利用している身近な例がゴムタイヤだ。

タイヤの中に入っているゴムチューブや、風船や、浮き輪のように、気体を注入すると膨らんで形を作るような膜構造をinflatable structure(インフレータブル構造)という。この”inflatable”は「気体を充填して膨張させられる」といった意味だ。もっと大ざっぱには「風船式の」とも言える。 続きを読む

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ソフト・ロボティクス入門5:ハードとソフトの間で

体がやわらかいと困ることもある。
硬くて尖ったものに触れると傷つきやすい。ぐにゃぐにゃしていると重いものを支えられない。やわらかさも硬さも、同じくらい大事だ。例えば、カタツムリは、やわらかい足とかたい殻を両方備えている。人間の体も、やわらかい組織とかたい骨の組み合わせだ。

柔らかさも硬さも必要というなら、その両方を備えた素材があったら便利ではないだろうか?
いくつか、それを実現する技術がある。 続きを読む

ソフト・ロボティクス入門4:なぜ研究者は触手を作るのか?

いろいろなソフト・ロボットを眺めていると気づくことがある。
タコの足に代表されるような、グネグネした細長いものが多いことだ。

ソフト・ロボティクスは、触手(tentacle)を作るのが得意である。
骨がない、ゾウの鼻(trunk)、あるいは舌(tongue)のようなものは、やわらかいもので作るのが自然だ。
硬い部品の組み合わせでは、弾性変形や、なめらかな表面を再現することは難しい。
一方で、ソフト・ロボティクスならではの機構が触手の他にあまりない現状、も見えてくる。

触手状のソフト・ロボットをいろいろ見てみよう。 続きを読む

ソフト・ロボティクス入門2:ロボットをやわらかくする方法

単純に考えると、やわらかいロボットを作ろうと思ったら、やわらかい素材を使えばよい。
アルミ合金やスチールの代わりに、ゴムやスポンジを使えば、ロボットはやわらかくなる。

そのときに何が起こるか?
すべての素材をやわらかくしたら、ロボットは体重を支えられなくなってグンニャリするだろうし、歯車やねじは役に立たなくなるだろう。素材を変えたら、設計も変えなければいけないのだ。

ロボットを、なぜやわらかくしたいのか?という疑問がすぐ思い浮かぶ。 続きを読む

ソフト・ロボティクス入門1:やわらかいロボットを目指して

気まぐれに連載、ソフト・ロボティクス入門である。

「ロボティクス」はロボットに関するさまざまな技術や学問をまとめて呼ぶ言葉だ。最近は、工学だけにとどまらない学際的な分野になったので、「ロボット工学」よりも「ロボット学」と言った方が合っている。

「ソフト・ロボティクス(Soft Robotics)」はロボティクスの中でもまだ研究途上の、若い分野だ。なにができるかわからないけれども、これがロボティクスの未来だと信じる少数の研究者が、いろいろなことを試している。黎明期ならではの活気と多様性が、この分野にはある。 続きを読む